
概要
summary
科学技術系の名著『Scientists Must Write』の邦訳版。1978年の初版刊行以来、英語圏を中心に教育機関や研究現場で長く読み継がれてきたロングセラーです。2002年には第2版が刊行され、ICTの進展にも対応した内容に刷新。本書は、科学者・技術者・学生をはじめ、科学や工学の分野で「書く力」を求められるすべての人に向けた実践的な作文技術ガイドです。
著者ロバート=バラスは、名文を紡ぐ才能よりも、主題に即し、自然な論理展開で不要な情報を含まない「優れた文」を書くための技術は誰にでも習得可能であると説きます。論文や報告書はもちろん、手順書や進捗報告、プレゼン原稿など、現場で求められる幅広い文書に対応し、思考を整理し、伝える力を高めるための基本原則―明確性、簡潔性、順序性、客観性―を丁寧に解説。擬人化や目的論的表現を避けるべき理由も明示され、読み手への配慮や段落構成まで踏み込んだ具体的な指導が行われています。実践的な演習や他人の文章の分析を通して、表現力を段階的に磨く構成は、教育現場でも大いに活用できます。書くことのストレスを減らし、観察・思考・記憶の力を引き出すための“作文の羅針盤”として、すべての科学を志す人に薦めたい一冊です。
目次
contents
- はじめに
- 謝辞
- 凡例
1章 科学者は書かなければならない
- 科学の一部として書く
- 科学的方法
- 研究結果の公開
- 科学の大衆化
- 基本技術の研鑽
- 文章を改善しよう
- 科学者や技術者は何を書いたらいいのか
- 文書に寄せられた論評をよく考えよう
- 作業手順書を書く
2章 個人的な記録
- 書くことは思い出すことの助け
- 役に立つメモを取る
- 書くことは観察の助け
- 実務記録を残そう
- 書くことは思考の助け
- 論考を助ける小論文の書き方
- 進捗報告書は思考を助ける
- 思考をしっかり記録する
- 整理整頓をしておく
- 文章を改善しよう
- 執筆には広罫のA4用紙を使う
- 記録のすべてに日付を記入しよう
- 研究の一環として記録しよう
- 考えることや計画立案の補助として文章を書こう
- 観察の補助として文章と線描画を役立てよう
- 書くことが研究にどう役立つのかを考えよう
3章 日常の意思伝達
- 手紙文 (書簡)
- 連絡通信文 (メモ)
- 電子メール
- 文章を改善しよう
- 文章にしよう
- 伝達情報は端的に提示しよう
- 複写を残しておく
- 求職出願書や昇進申請書を作成する
4章 科学者はどのように書くべきか
- 科学的記述の特徴
- 説明
- 明確性
- 完全性
- 普遍性
- 順序
- 正確性
- 客観性
- 擬人化による表現
- 目的論的表現
- 簡潔性
- 科学的記述法
- 文章を改善しよう
- 他人の文章の批判的検証
- 自分の文章の批評的評価
5章 考える―計画する―執筆する―修正する
- 考える,計画する
- 情報や着想を取りまとめる
- 「話題のあらまし」を整理する
- 段落を順番に並べる
- 執筆する
- 修正する
- 文章を改善しよう
- 小論文執筆の練習
- 見栄えのいい小論文の研究
- 「話題のあらまし」の準備
- 試験問題への解答と採点方法の検討
- 試験では,採点者に分かりやすく伝える
- 試験では時間を上手に配分しよう
6章 語彙を磨く
- 言葉の意味
- 混同されやすい言葉
- よく混同される他の言葉
- よく誤用される言葉
- よく取り違えられる言葉
- 大げさな言葉
- 不必要な言葉
- 専門用語
- 命名法
- 商標名
- 略語,短縮語,頭字語
- 文章を改善しよう
- 言葉に関心を持とう
- 辞書を使おう
- 言葉を慎重に選ぼう
- 専門用語は定義しよう
7章 適語の選択
- 文脈の中での言葉
- 単語の繰返し
- 単語の位置
- 慣用表現
- 回りくどい表現
- 類義語の無用な反復
- 言葉がくどくなる理由
- 注釈や「繋ぎ言葉」の必要性
- 文章を改善しよう
- 明確性と簡潔性を心掛ける
- 他人の文章を修正する
- 要約と概要を書こう
- 書評を書く
8章 読者への配慮
- 読みやすく書く
- どう書き始めたらいいか
- 文書管理
- 強調
- 文の長さ
- 調べ(リズム)
- 文体(論考の表現法)
- 読者の心をつかもう
- 言葉遣いに気を付けよう
- 読者に理解してもらえない原因
- 効果的な意思疎通のための工夫
- 文章を改善しよう
- 手慣れた執筆者に倣おう
- 書いて学ぼう
- 読みやすい文章を書こう
9章 数値は正確さの裏付け
- 数字とSI単位系の使用
- 数字
- SI単位
- 表を準備する
- グラフと図表の作成
- 折れ線グラフ
- ヒストグラム
- 棒グラフ
- 円グラフ
10章 イラストは明確さの支援
- 説明の補助としてイラストを使おう
- 写真
- 線描画(ペンや鉛筆などによる線描画)
- 平面図と図表
- 縮尺どおりには描かれていない図
- イラストの準備
- 寸法(長さや幅の単位表記)
- 図画(絵画,イラストで陰影や彩色を施す)
- 完成したイラスト
- 文章を改善しよう
- 図解に傍注(見出し)を付けよう
- イラストと傍注のチェック
11章 情報の検索
- 科学の一環としての読書
- 他者の研究
- 情報源
- 辞書
- 百科事典
- ハンドブック
- 規格
- 名鑑
- 書籍
- 総説
- 専門雑誌
- インターネット(ワールド・ワイド・ウェブ)
- イントラネット
- 文章を改善しよう
- 目的に応じた読書
- 読みながらメモを取ろう
- 情報源の引用
- 書評を書いてみよう
12章 研究報告書のまとめ方
- 報告書の構想立案
- 「話題のあらまし」を作成する
- 段落ごとに番号を付ける
- 研究報告書の構成
- 表紙
- 表題紙
- 抄録あるいは要約
- 目次
- 序論
- 材料と方法(または手順)
- 結果
- 考察
- 結論
- 提言
- 謝辞
- 参考文献目録または参考文献リスト
- 付録
- 索引
- 配布リスト
- 学位論文および学生の研究報告書
- 学位論文[単数形:thesis,複数形:theses]
- 学生の研究報告書
13章 研究報告を書く
- まずは書くことから始めよう
- 原稿の準備(初稿)
- 文書を改善しよう
- 原稿の確認(初稿)
- タイプ原稿の準備
- タイプ原稿のチェック
- 索引の準備
- タイプ原稿で印刷に備える
- 編集者との協調
- 査読者(および著者)のための点検リスト
- 「校正刷り」の点検
- 要約
- 調査報告書や出版論文の作成
14章 科学を語ろう
- 講演の準備
- ポスター発表(学術的な研究の成果を発表する1つの方法)
- 聴衆に語りかけよう
- 視聴覚機器の準備
- 黒板やホワイトボード,またはフリップチャートの利用
- オーバーヘッドプロジェクター(OHP)の利用
- スライドの利用
- 聴衆に話を届けよう
- 付録
- 付録A 句読点
- 付録B 単語の綴り
- 付録C コンピュータの活用
- 付録D 書簡や記録の様式例(英語版)
- 付録E 簡潔な記述
- 参考文献
- 索引
著者・訳者紹介
introduction
装丁
binding